行政書士シーガル事務所

会話で学ぶシリーズ 家族信託契約の基礎知識

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会話で学ぶシリーズ 家族信託契約の基礎知識

会話で学ぶシリーズ 家族信託契約

2025/01/20

はじめに

皆様、こんにちは。
シーガル事務所の島田です。

今回は、家族信託契約について、実際の相談風景を題材にして会話形式で解説します。

登場人物は、ご自身の財産管理に不安を感じている花子さん、
その娘で信託契約の受託者となる留美さん、
そして、相談を受ける行政書士事務所所長のカモメ、
この3人です。

家族信託契約を検討されている方はもちろん、家族信託に少し興味をお持ちの方にも、ぜひ読んでいただきたい内容です。

第1章:家族信託を検討するきっかけ

カモメ
花子さん、留美さん、本日は当事務所にお越しいただきありがとうございます。
花子さんから事前にご相談内容を伺っておりますが、
改めて、家族信託を検討されたきっかけを教えていただけますでしょうか。

花子
はい、カモメ先生。実は、2年前に夫を亡くしまして、今は一人暮らしをしております。
相続したマンションに住んでいるのですが、他に築30年になるアパートも持っていて、
そちらの管理が大変になってきたんです。

留美
母は高齢ですし、アパートの修繕が必要になるたびに、業者とのやり取りや契約手続きが大変そうなんです。
私も仕事がありますので、なかなか手伝ってあげられなくて…。

花子
そうなのよ。留美に迷惑をかけたくないし、将来のことを考えると、何か対策を考えないといけないと思って。
それで、以前から気になっていた家族信託について、一度専門家の方に話を聞いてみたいと思ったんです。

カモメ
なるほど、お気持ちがよくわかります。
花子さんのように、ご自身の財産管理や将来について不安を感じている方はたくさんいらっしゃいます。
家族信託は、ご家族の状況に合わせて柔軟に財産を管理・承継できる制度ですので、
花子さんのケースにも有効な手段となりえますね。

留美
私も家族信託については少し調べてみたんですが、まだ分からないことが多いんです。
今日は、先生に色々教えていただきたいと思っております。

カモメ
ありがとうございます。留美さんは事前に調べてこられたのですね。素晴らしいです。
では、まず家族信託の基本的な仕組みからご説明しましょう。

第2章:家族信託の仕組みとは?

カモメ
家族信託とは、ご自身の財産を信頼できる家族に託し、その家族が、ご自身のために財産を管理・運用・処分する制度です。
花子さんの場合、花子さんが「委託者」となり、留美さんが「受託者」となります。

花子
委託者と受託者…聞き慣れない言葉ですね。

カモメ
はい、委託者とは、信託財産(この場合は、花子さんのアパートやマンションなど)を託す人のことです。
「託す人」ですね。
受託者とは、その財産を管理・運用する人のことです。
「託される人」です。
受託者は、信託契約に基づき、委託者のために誠実に財産を管理する義務を負います。

留美
なるほど。私が母の代わりにアパートの管理をするということですね。
具体的には、どのようなことをするのでしょうか?

カモメ
はい、留美さんは、アパートの賃料収入を受け取り、修繕費を支払ったり、入居者との契約手続きをしたりと、
建物の維持管理全般を行うことができます。
もちろん、信託契約の内容によって、受託者の権限範囲はお二人で自由に設定できます。

花子
それは助かりますね。
以前は、私自身で全て対応していたのですが、年齢とともに負担を感じていました。

カモメ
そうですね。
家族信託は、財産の管理だけでなく、将来的な財産の承継についても、柔軟に設計できるという点が大きな特徴です。
例えば、恐れ入りますが花子さんがお亡くなりになった後、アパートを留美さんが相続するように、
信託契約で定める形にすることも可能です。

留美
相続についても、信託契約で決められるのですね。それは便利ですね。

カモメ
はい、その通りです。通常の相続手続きですと、遺産分割協議などが必要となり、
ご家族間で揉めてしまうケースも少なくありません。
しかし、家族信託であれば、事前に誰にどの財産を承継するかを明確に決めておくことができるので、
相続に関するトラブルを未然に防ぐことができるのです。

花子
将来のことも考えると、家族信託は安心できるしくみですね。

カモメ
そうですね。
家族信託は、ご自身の財産を、ご自身の意思に基づいて、ご家族に託し、ご自身の将来の生活を支えることができる制度です。

第3章:家族信託契約の活用方法

カモメ
さて、次に、家族信託契約の具体的な活用方法についてご説明します。
家族信託は、財産の所有者である委託者が、信頼できる家族などの受託者に財産の管理を委ねる契約です。
花子さんの場合、アパートの権利を残したまま、管理だけを留美さんに任せることができます。
名義を留美さんに変更する必要がありますが、権利は花子さんにあります。
具体的には、アパートの管理を留美さんに任せるという目的で信託契約を結びますが、他にも、様々な活用方法があります。

留美
他にもどんな活用方法があるんですか?

カモメ
例えば、認知症などで判断能力が低下した場合、ご自身の財産を自由に動かせなくなる可能性があります。
しかし、家族信託をしていれば、受託者である留美さんが、花子さんのために財産を管理・運用できます。

花子
それは安心ですね。もし私が認知症になってしまったら、アパートの管理はどうなるんだろうと不安でした。

カモメ
はい、家族信託は、認知症対策としても有効な手段です。
また、花子さんのように、不動産をお持ちの方が、不動産の有効活用を目的として信託契約を結ぶこともあります。
例えば、賃貸アパートを建て替えたり、売却したりする場合、受託者がスムーズに手続きを進めることができます。

留美
そうですね。母が高齢になってきたので、アパートの建て替えや売却が必要になった時、
私が代わりに手続きを進められるのは、とても助かります。

カモメ
はい、家族信託は、財産を適切に管理・運用し、将来的なリスクに備えるための、非常に有効な手段です。
また、信託財産から得られる収益を、花子さんの生活費に充てたり、将来の介護費用に備えることもできます。

花子
私の生活のことも考えていただけるのは、本当にありがたいです。

カモメ
そうですね。家族信託は、ご自身の財産を、ご自身のために活用するための、柔軟な設計が可能な制度です。花子さんのように、高齢になって財産管理に不安を感じている方だけでなく、ご家族の将来を考えている方にも、ぜひ検討していただきたい制度です。

第4章:家族信託契約の留意点

カモメ
さて、家族信託契約は、非常に便利な制度ではありますが、いくつか留意点もあります。

留美
留意点ですか?詳しく教えてください。

カモメ
まず、家族信託契約は、契約内容を慎重に検討する必要があります。
誰を委託者にするか、誰を受託者にするか、どのような財産を信託するか、
受託者の権限範囲をどこまでにするかなど、一つ一つ丁寧に決める必要があります。

花子
そうですね。内容はとても大事ですね。

カモメ
はい、そして、受託者には、信託財産を適切に管理する義務があります。
また、受託者は、信託契約に基づき、委託者のために誠実に財産を管理しなければなりません。
もし、受託者がその義務に違反した場合、損害賠償責任を負う可能性もあります。
少し長くなって恐縮ですが、ご説明します。

受託者の主な義務として、分別管理義務、帳簿作成義務、定期報告義務などがあります。
まず、信託財産は受託者の個人財産とは別に管理しなければなりません。

留美
つまり、アパートの収入は別口座で管理する必要があるということですね。

カモメ
おっしゃる通りです。
また、収支の記録を付け、定期的に花子さんに報告する必要があります。
信託財産の管理状況を委託者が把握できるようにするためです。

花子
それは安心ですね。でも、留美に負担をかけすぎないかしら…。

留美
大丈夫よ、お母さん。
私も将来のことを考えると、今からアパートの管理について勉強できるのはいいと思います。


留美
それにしても、責任の重さを感じますね。

カモメ
はい、受託者の責任は確かに重いものです。
また、信託契約は、一度締結すると、簡単に変更することができません。
変更する場合は、委託者と受託者双方の合意が必要となります。
そのため、将来の状況の変化も考慮した上で、慎重に契約内容を決める必要があります。

留美
母が認知症になったら契約を変更できないのですか。

カモメ
はい、認知症の重さによりますが、契約できない程度の認知症ですと、変更もできないため、
信託契約の内容が継続されることとなります。
言い換えると、認知症になった後も留美様が信託財産を管理する権限が維持されますから安心なのです。

花子
なるほど。
長く付き合っていく契約ですから、慎重に考えないといけませんね。

カモメ
はい、その通りです。
また、家族信託契約は、専門的な知識を必要とするため、専門家にご相談いただくことをお勧めします。
当事務所では、お客様の状況に合わせて、最適な信託契約をご提案させていただきます。

留美
専門家の方に相談すれば、安心して契約できますね。
ところで、契約書にはどのようなことを記載すればいいでしょうか?

カモメ
主な項目として、信託財産の範囲、信託の目的、受託者の権限と義務、信託財産の管理・処分方法、
収益の配当方法などを定めます。
また、受託者が事故や病気で管理できなくなった場合に備えて、次の受託者も指定しておくことをお勧めします。

留美
そうですね。2つ質問があります。

例えば、修繕費は賃料から支払うという形にできますか?

次に、私の妹を次の受託者として指定するのはどうでしょうか?

カモメ
一つ目の修繕費についてですが、信託財産である不動産の管理に必要でしたら問題ありません。
二つ目の次の受託者についてですがそれは良い案ですね。できれば妹さんの同意を得ておいてください。
同意は必須条件ではないのですが、あとでトラブルにならないようにしましょう。

第5章:まとめと今後のステップ

カモメ
本日は、家族信託契約の基本的な仕組みから、活用方法、留意点までご説明いたしました。
花子さんの場合、アパートの管理を留美さんに任せるという目的で、家族信託は非常に有効な手段となりえます。

花子
今日はとても分かりやすかったです。信託契約に対する不安がだいぶ解消されました。
家族信託は、私にとって安心できる制度だということがよく分かりました。

留美
私も、家族信託について、より深く理解することができました。
母のために、これからもしっかりサポートしていきたいと思っています。

カモメ
そうおっしゃっていただけて、大変嬉しく思います。
今後のステップとして、まずは、花子さんの財産状況を詳しくお伺いし、
信託契約の内容について具体的に検討していきましょう。
契約書の作成に入る前に、もう一度ご家族でよく相談していただき、
疑問点があればいつでもご連絡ください。次回は具体的な契約内容について詰めていきましょう。

留美
はい。家に帰って妹とも相談してみます。ありがとうございました

花子
カモメ先生、よろしくお願いします。

留美
よろしくお願いします。

カモメ
はい、こちらこそよろしくお願いします。

終わりに

いかがでしたでしょうか?
今回のブログ記事では、家族信託契約について、相談風景を題材に解説しました。
家族信託は、ご自身の財産を、ご自身の意思に基づいて、ご家族に託し、ご自身の将来の生活を支えることができる制度です。ご自身の財産管理や将来について不安を感じている方は、ぜひ一度、専門家にご相談ください。

当事務所では、お客様の状況に合わせて、最適な家族信託契約をご提案させていただきます。
お気軽にお問い合わせください。

(文責 島田)

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