会話形式で学ぶ、任意後見契約:家族で考える未来
2024/11/05
目次
1.はじめに_任意後見契約ってなに?
2.知らなければ後悔する?法定後見制度と任意後見制度の違い
3.任意後見契約にもメリットとデメリットがある
4.任意後見契約の具体的な手続きは?
5.最後に_親子で考える後見制度の大切さ
1.はじめに_任意後見契約ってなに?
ある土曜日の午後。
75歳の多恵子さんとその子どもたち、50歳の息子・啓介さん、48歳の娘・翔子さんは、
任意後見契約について詳しく知るために行政書士の麻衣さんを訪ねました。
啓介(息子)「予約していた品田です。私たちで任意後見契約について話していたのですが、
細かいところがどうしてもわかりません。それで、どういうものか聞きたくて来ました。」
麻衣(行政書士)「今日はようこそいらっしゃいました。皆さんが気になっている『任意後見契約』について、
さっそく、まずはシンプルにご説明しますね。
簡単に言えば、信頼できる家族や友人に、将来自分が認知症などで判断が難しくなったときに支えてもらえるように
契約を結んでおく仕組みです。」
多恵子(母)「そうなのね、やっぱり子どもたちにいずれ世話になりたいと思っているけれど、
そういう形で事前にお願いすることもできるのね。」
麻衣「はい。身上監護とか身上保護とかいいますが、要は身の回りのお世話をしてもらう方を後見人といいます。
任意後見契約とは、その後見人の予約をする仕組みです。」
2.知らなければ後悔する?法定後見制度と任意後見制度の違い
啓介さんが興味深そうに聞き入る一方で、少し疑問を抱いているようです。
啓介「でも、普通はそういうのって家庭裁判所が決めるんじゃないの?わざわざ契約する必要あるのかな?」
麻衣行政書士:「おお、鋭い質問です。では、法定後見制度と任意後見制度の違いについて詳しくお話ししますね。
法定後見制度の場合、家庭裁判所が判断して後見人を選任するので、
後見人が弁護士や司法書士といった専門職になることが多いです。
もちろん信頼できる人たちだとは思いますが、後見人を選ぶ際に家族の意向が反映されないことが残念ながらほとんどです。」
翔子さんも興味を持ち、話に加わります。
翔子(娘)「なるほど。任意後見制度だと、必ず後見人に家族や信頼できる人を選べるってこと?」
麻衣行政書士「必ずとまでは言えませんが、なにより本人のご希望ですからおおむね契約通りになります。
ただし、家庭裁判所が契約内容に問題があると判断した場合や任意後見人が不適切だと判断された場合には、
裁判所の裁量で変更されることもなくはありません。
そんなようなことを防ぐために私たちや公証役場が関わっているわけです。
任意後見制度は自分で『誰に何をしてもらうか』を自由に決められるので、
例えば、家族である翔子さんが多恵子さんの後見人になることも可能です。
ただし、後見人が不正をしないように、家庭裁判所が選ぶ弁護士などが任意後見監督人として選任されます。
監督人が選ばれてから初めて、任意後見契約が効力を発揮します。」
解説:
法定後見制度:家庭裁判所が後見人を選任し、一般的に弁護士などが担当。
任意後見制度:信頼できる人をあらかじめ選び、将来のために契約を交わしておく。
先日当所のセミナーにご登場いただいた公証人の言葉によると
「任意後見契約は後見人を予約することです」
3.任意後見契約にもメリットとデメリットがある
啓介「契約しても、将来、必要になるか分からないってことだよね。
もし認知症にならなかったら、この契約は無駄になるんじゃない?」
麻衣行政書士「おっしゃるとおり、任意後見契約が実際に必要になるかは誰にも分かりません。
任意後見制度は、いわば“保険”のようなものです。
認知症になる確率は7人に1人と言われていますが、ならないほうが理想的で、
使わずに済むならそれに越したことはありません。
ただ、もしものときに備えて、
ご自身が信頼できる方に身の回りの世話をしてもらえるという安心を得るためにも契約するのです。」
コスト:契約の作り込み方にも左右されるが、任意後見契約の作成には公正証書の手数料を含めて20~30万円程度が目安
4.任意後見契約の具体的な手続きは?
話が進むにつれ、翔子さんは任意後見契約の具体的な手続きについて質問を始めました。
翔子「この契約って、ただの口約束じゃないんですよね?どうやって正式に進めるの?」
麻衣行政書士「大切な質問ですね。任意後見契約は口約束ではなく、公正証書として公証役場で正式に作成します。
例えば、多恵子さんが翔子さんに後見をお願いしたい場合、契約書には何をしてほしいかを具体的に書きます。
生活のサポートや金銭管理だけでなく、通院の付き添いや、施設入所の手続きといった細かい内容まで記載するのが理想です。」
翔子「契約書は、簡単に作れるものじゃないのね」
啓介「実際に作るとしたら、何回も打ち合わせが必要になりそうだね」
麻衣行政書士「はい、実際にご依頼いただくとしたら最初の打ち合わせで私が原案を作り、
2回か3回かチェックしていただくことになると思われます。
特にお母様が後見人に何をして欲しいか。ここがとても大切ですね。」
多恵子「たくさん希望を言うわよ」
啓介「話はちょっと変わるけどねぇ後見人って報酬を払うの?」
麻衣行政書士「自由です。任意後見人が相続人の場合は報酬なしの場合もあります。
しかし後見人の負担がそれなりに多くなりそうであれば、いくらかの報酬を契約書に設定する場合もあります。
算定方法や支払方法など決めなければならないことがいくつかあります。
報酬を設定する場合は必ず私にお伝えください。」
多恵子「確かに大切ね(笑)」
麻衣行政書士「もう一点、それほど高額ではないのですが、
任意後見監督人にも報酬を払う必要がありますので念頭に置いておいてください。
話の焦点が広がり過ぎてしまうので、今日はひとまず割愛します。」
5.最後に_親子で考える後見制度の大切さ
説明が一通り終わり、家族はこの制度について前向きに検討する気持ちを抱きつつも、今回は結論は出ませんでした。
啓介「分かったけど、まだピンとこない部分もあるなぁ…。でも、母さんの気持ちを尊重したいし、
翔子に頼むのも悪くないかも。」
多恵子「確かに、もし自分が一人で何も決められなくなったときに備えて誰に頼むか決めておくのもいいかもしれないわね。」
麻衣「ご家族の中でじっくりお話し合いください。任意後見契約はすぐに効力を発揮するものではありませんが、将来の不安を減らすために大切な仕組みです。」
翔子「兄が言うように私が後見人になるかどうかはわかりませんが、親子でじっくり考えてみますね。
今日は本当にありがとうございました。
任意後見契約は「私が希望する後見人の予約」です。
私の老後の面倒は私が信頼する人に見てもらいたい。
当たり前ですね。
とは言えその後見人が業務を果たせなくなった場合にはどうするでしょうか。
そのような事態に備えて予備後見人を設定するなど方法がいくつかあります。
当事務所は任意後見契約の作成を行うとともに、ご依頼があれば任意後見業務も行っております。
気になることがあれば放っておかず、
お気兼ねなく行政書士シーガル事務所に「お問い合わせはこちら」からまたは電話にてご連絡ください。
(文責:島田)
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