【会話形式で理解る】花子おばあさんの遺言作成物語~公正証書遺言のメリットとは?
2024/07/22
会話形式で学ぶシリーズ(公正証書遺言)です。
遺言を書くことにより、法定相続分の考えから離れて、自分の意思で財産の配分が可能となります。
今回はどのように遺言を作成するか、その場面の一部を垣間見ていただければと存じます。
登場人物
・花子さん(ご相談者。72歳)
・一子さん(花子さんの長女。独身)
・二子さん(花子さんの次女。配偶者あり、二人の子供は社会人となり独立)
・カモメさん(行政書士事務所所長)
・シーガル君(行政書士)
行政書士事務所にて
花子さん「こんにちは、カモメさん、シーガル君。今日はよろしくお願いします。」
カモメさん:「こんにちは、花子さん。どうぞおかけください。今日は遺言作成について詳しくお話ししましょう。」
シーガル君:「まずは、遺言を作成することのメリットについて私からご説明いたします。
遺言を作成することで、あなたの意思を明確に伝えることができます。
そのため、遺産分割における家族間のトラブルを避けることができます。」
花子さん「それは重要ですね。家族の間で揉めるのは避けたいですから。」
カモメさん「さらに、付言事項(「追伸」のようなもの)を活用することで、遺言に個人的なメッセージや希望を追加することができます。
例えば、特定の財産を特定の人に渡す理由や、感謝の気持ちを伝えることができます。」
シーガル君:「付言事項には法的効力はありませんが、当事務所では非常に重要なものと考えています。付言事項を通じて、ご家族に対する気持ちや、遺産の分配に対する花子さんの考えを伝えることができます。」
花子さん「なるほど。付言事項を使うことで、ただの法律的な文書ではなく、私の気持ちも伝えられるんですね。」
カモメさん「はい、その通りです。ところで、遺言には大きく分けて公正証書遺言と自筆証書遺言の2種類があります。公正証書遺言は、公証人が関与するため数万円手数料がかかりますが、遺言の有効性が保証され、確実性が高いとされています。」
シーガル君:「一方、自筆証書遺言は手軽に作成できますし、丁寧に作りますから法的な不備はなくできますが、保管等の問題でリスクがあります(※)。そのため、今回は公正証書遺言をお勧めいたします。公正証書にすると公証役場が内容のチェックを行ってくれた上で保管してくれます。」
花子さん「わかりました。公正証書遺言にしようと思います。具体的には、どのように進めれば良いのでしょうか?」
カモメさん「まずは、遺言に記載する内容を決める必要があります。私の全財産の現預金を全て長女の一子さんに渡す予定だと伺いましたが、遺留分の問題がありますので、次女の二子さんにも配慮が必要です。」
花子さん「そうなんです。実は一子にほぼすべてを残したいと思っていたのですが、カモメさんとシーガル君の助言を受けて考え直しました。」
シーガル君「それは良かったです。遺留分を考慮しながら、適切な分配方法を見つけたいですね。
もし可能であれば、一度お子さんたちとも話し合ってみてください。その上で最終的な内容を決められたら理想的です。」
(※)自筆証書遺言書保管制度https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html
令和2年7月10日に始まりました。
形式のチェックと保管を行う良い制度ですが、遺言の内容について担保はされないことに留意してください。
家族の会話 ~子供たちと相談~
花子さん「一子、二子、ちょっと話があるの。時間あるかしら?」
ーーーーーー後 日ーーーーーーー
一子さん「お母さん。今日は何のお話?」
二子さん「お母さん、何かあったの?」
花子さん「実は、遺言を作成しようと思っているの。あなたたちの意見も聞きたくてね。」
一子さん「遺言?そんなことをもう考えているの?」
花子さん「そうなの。遺言があると、後々のことがスムーズに進むからね。
特に財産の分配については、きちんと決めておきたいの。」
二子さん「そうね、お母さんがそう思うなら、私たちも協力するわ。」
一子さん「それで、お母さんはどうしたいと思ってるの?」
花子さん「生活もなかなか大変そうだし、最初は一子に全て渡そうと思っていたんだけど、あまり偏るのもどうかなと思って。
それに遺留分の問題があるから、二子にもちゃんと配慮しなきゃと思ってね。」
二子さん「それはありがたいけど、お母さんが決めることだから、私たちは従うだけだよ。」
一子さん「そうね。でも、私は二子にもっと分けてもいいと思ってる。私は独身だし、二子には家族がいるんだから。」
花子さん「ありがとう、一子。でも、一子の将来も母としては心配だし、二子のところの孫たちは独立したしね。
ちゃんとバランスをとって決めるから安心してね。」
二子さん「お母さんが決めることに反対はしないけど、一子にもちゃんと渡してほしい。お母さんの意思を尊重したいの。」
一子さん「私も二子の意見に賛成よ。お母さんの意思が一番大切だから。」
再度、行政書士事務所にて
花子さん「子供たちとも話し合って、納得してもらえました。遺言の内容を最終的に決めたいです。」
カモメさん「それは良かったです。では、具体的にどのように分けるかお聞かせください。」
花子さん「現預金を一子と二子にバランスよく分けたいです。一子には少し多めに、でも遺留分を考慮して二子にもちゃんと分けます。」
シーガル君「具体的な割合や金額を教えていただけますか?」
花子さん「一子には60%、二子には40%と考えています。」
カモメさん「なるほど、それなら遺留分の問題もクリアできますね。それでは、その内容で公正証書遺言を作成しましょう。」
シーガル君「付言事項についても考えましょうか。付言事項には法的効力はありませんが、ご家族への気持ちを伝える重要なものです。何か特別に伝えたいことはありますか?」
花子さん「一子と二子への感謝の気持ちを書きたいです。そして、二子の家族にも幸せを祈る言葉を添えたいと思います。」
カモメさん「素晴らしいです。では、その内容で進めさせていただきます。公証人との手続きを行いましょう。」
シーガル君「遺言の内容が確定したら、公証人の立ち会いのもとで署名していただきます。」
花子さん「ありがとうございます。これで安心して過ごせます。」
カモメさん「付言事項の例として、こんな感じはいかがでしょうか?」
付言事項の例
一子さんへの感謝の言葉
「一子、あなたがこれまで私を支えてくれたことに深く感謝しています。私に対して常に心を配ってくれました。あなたの将来が明るく、幸せでありますように願っています。」
二子さんへの感謝の言葉
「二子、あなたが家族とともに幸せな家庭を築いていることを誇りに思います。私が心配することなく安心して過ごせたのは、あなたの支えがあったからです。これからも家族と共に幸せな日々を送ってください。」
二子さんの家族への祈り
「二子の家族へ、これまで花子の面倒を見てくれてありがとう。皆さんのおかげで花子は安心して過ごせました。どうかこれからも家族全員が健康で、幸せでありますように。」
遺産の分配理由「一子には少し多めに遺産を残しますが、これは彼女の独身生活を支えるためです。二子にはその分少なくなりますが、彼女には家族があり、十分に支えられていると考えています。皆が納得し、理解してくれることを願っています。」
シーガル君「もっと長い付言事項もありますが、このように付言事項を加えることで、花子さんの思いが家族にしっかりと伝わります。法的な効力はありませんが、心のこもったメッセージはご家族にとって大切な遺産となるでしょう。」
花子さん「ありがとうございます。具体的な例をいただけて、非常に参考になりました。付言事項を入れることで、私の気持ちをしっかりと伝えられると感じます。」
カモメさん「では、遺言書の内容と付言事項をまとめ、公正証書遺言として作成する手続きを進めましょう。公証人との日程を調整し、花子さんと一緒に公証役場に行きます。」
花子さん「よろしくお願いします。これで心の準備も整いました。」
シーガル君「手続きが完了しましたら、遺言書の原本は公証役場に保管されます。花子さんには正本と謄本(※)をお渡ししますので、大切に保管してください。」
花子さん「わかりました。これで安心して過ごせます。本当にありがとうございます。」
(※)公正証書遺言「原本」「正本」「謄本」
「原本」:オリジナルの書面。公証役場の金庫に保管されます。
「正本」:原本と同じ効力を持つ「写し」。法務局や金融機関での手続に使用する。
「謄本」:原本の写しであるが正本のような効力はない。ただ謄本が存在することにより原本が存在することが推定される。
公証役場での公証人の手続き
公証人「花子さん、本日は公正証書遺言の作成のためにお越しいただきありがとうございます。内容を確認し、署名いただく手続きになります。」
花子さん「よろしくお願いします。」
カモメさん「こちらが遺言書の内容と付言事項になります。花子さん、ご確認ください。」
花子さん(内容を確認しながら)「はい、これで間違いありません。付言事項もしっかりと入っています。」
シーガル君「では、公証人の立ち会いのもとで署名していただきます。」
公証人「花子さん、ここに署名をお願いします。」
花子さん(署名しながら)「これで私の意思がきちんと伝わると思います。」
公証人「ありがとうございます。これで公正証書遺言の作成が完了しました。花子さん、安心してお過ごしください。」
花子さん「ありがとうございます。これで本当に安心しました。」
子供たちとの最終確認
花子さん「一子、二子、遺言の作成が無事に終わりました。あなたたちにも内容をお伝えしたいの。」
(※伝えなくても構いません)
一子さん「お疲れ様、お母さん。どんな内容になったの?」
花子さん「一子には60%、二子には40%と分けることにしました。そして、付言事項も入れました。私の感謝の気持ちをしっかりと伝えたかったの。」
二子さん「お母さん、ありがとう。付言事項って、どんなことを書いたの?」
花子さん「一子にはこれまでの支えに対する感謝を、二子には家族と共に幸せに過ごしてほしいという気持ちを書きました。二子の家族にも感謝の言葉を添えました。」
一子さん「ありがとう、お母さん。私たちも、お母さんの気持ちを大切にします。」
二子さん「そうね。お母さんの遺言を尊重して、私たちも仲良く過ごしていきたいと思います。」
花子さん「ありがとう。これで安心して過ごせるわ。これからもよろしくね。」
まとめ
遺言作成のプロセスを通じて、花子さんの思いが家族にしっかりと伝わり、家族間の理解と協力が深まりました。
行政書士のカモメさんとシーガル君のサポートにより、法的に有効かつ心温まる遺言が完成しました。
付言事項は法的効力はないものの、家族に対する花子さんの感謝の気持ちや願いを伝える重要な役割を果たしました。
おしまい
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