家族信託の具体的なメリット・デメリットと費用の相場
2025/02/24
急速な高齢化に伴い、相続対策・認知症対策の一つとして「家族信託」が注目を集めています。
本記事では、家族信託の基本的な仕組みから、具体的なメリット・デメリット、
さらには費用相場まで、詳しく解説していきます。
相続対策・認知症対策・資産承継(特に収益不動産)をお考えの方は、ぜひ最後までお読みください。
1. 家族信託契約とは?基本的な仕組みを理解しましょう
家族信託は、一般的には「民事信託」または「家族信託」と呼ばれる制度です。
信託法に基づき、自分の財産を信頼できる家族に託し、管理・運用してもらう仕組みです。
※資産の「運用」を目的とする商事信託とは異なります。
1-1. 家族信託の基本的な仕組み
家族信託では、主に以下の3つの役割が存在します。言いかえるとこの三者が存在して初めて家族信託が成り立ちます。
・委託者(財産を託す人)
現在の財産所有者であり、信託を設定する人です。
多くの場合、高齢の親がこの立場となります。
家族信託は究極には「契約」ですから自身の判断能力が低下する前に、信託を設定する必要があります。
・受託者(財産を管理する人)
委託者から財産の管理を任される人です。
多くの場合、信頼できる家族(例:子供)がこの役割を担います。
財産の管理・運用について大きな責任を負うことになります。
・受益者(財産から利益を受ける人)
信託財産から生じる利益を受け取る人です。
多くの場合、委託者本人がまず第一受益者となり、その後、家族が第二受益者として指定されます。
1-2. 家族信託の対象となる財産
家族信託で管理できる財産には様々なものがあります。
ご相談を受ける対象財産としては
- ・不動産(居住用、投資用)
- ・預貯金
がほとんどを占めます。
この財産を「信託財産」といいます。
他に
・有価証券 - ・事業用資産
- ・知的財産権
- ・会社の株式
- 等も対象となります。
なお委託者の財産すべてを信託財産にする必要はなく、
特定の財産を信託財産とすることが一般的です。
2. 家族信託のメリット
家族信託には、以下のような具体的なメリットがあります。
2-1. 円滑な財産管理の実現
認知症などで判断能力が低下した場合でも、受託者が適切に財産管理を継続できます。
この点が家族信託のもっとも活用される理由です。
例えば、
- ・預貯金の管理や支払い手続き
- ・不動産の管理や賃貸借契約の更新
- ・株式の議決権行使
- ・各種契約の締結や更新
これらの行為を、その都度裁判所の許可を得ることなどなく、委託者に代わって受託者がスムーズに行うことができます。
2-2. 柔軟な財産管理が可能
信託契約の内容に基づいて、状況に応じた柔軟な対応が可能です。
・将来の資産活用の設計
例えば、「認知症になった場合は有料老人ホームへの入居資金に充てる」といった、
将来の支出計画を具体的に定めることができます。
・段階的な財産移転
例えば、「委託者の死亡後、孫が20歳になるまでは教育資金として毎月10万円を給付する」といった、
きめ細かな設計が可能です。
2-3. 後見制度と比べたメリット
成年後見制度と比較すると、以下のような利点があります。
・手続きの簡便さ
成年後見制度では、財産の処分や重要な契約には裁判所の許可が必要となりますが、家族信託ではそれが不要です。
・プライバシーの保護
成年後見制度は戸籍に記載されますが、家族信託は私的な契約であり、戸籍への記載はありません。
3. 家族信託のデメリット・注意点
家族信託にも、いくつかの重要な注意点やデメリットが存在します。
3-1. 受託者に関する課題
・受託者の選定と負担
信頼できる適任者を見つけることが難しい場合があります。
※当事務所へのご相談で家族信託をご希望にも関わらず断念される理由のほとんどは適切な受託者の不在でした。
また、受託者には以下のような大きな負担がかかります:
- 財産管理の責任
- 定期的な報告義務
- 帳簿作成・保管の義務
- 利益相反取引の制限
・受託者の不正リスク
受託者が信託財産を私的に流用するリスクも理論上存在します。このため、受託者の選定は極めて重要です。
別の視点で見ると「いずれ引き継ぐのだから不正をしないように」と相続人を指定することが多く、
そのため家族内で行う信託(=家族信託)と呼ばれます。
とは言え極力そのリスクを低減するにこしたことはありません。
そこで、「信託監督人」という役割を家族外の専門家などで設定することが増えてきました。
3-2. 法的・実務的な制約
金融機関の対応家族信託に対する金融機関の理解や対応がまだ十分でない場合があります。
例えば
- 信託口口座の開設が困難(メガバンクは一切対応していません)
- 手続きに時間がかかる
ご相談→ご希望と問題点の洗い出し→信託設計図作成→検討(これらを繰り返して)契約書作成→公正証書化
契約内容の変更の難しさ
いったん設定した信託契約の内容変更には、委託者と受託者の合意が必要です。
委託者が認知症になられた場合は契約の変更はできません。
このため、当初の契約設計が極めて重要となります。
4. 家族信託の費用相場
家族信託の設定には、以下のような費用が必要となります。
4-1. 初期費用
・信託契約書の作成費用
私どもでは45万円(税別)~です。
例えば
<一代限りの完全オーダーメイド信託(認知症対策)>
<信託財産総額8,500万円>不動産は固定資産税評価額×1.1、現預金はそのまま。
上記の条件の場合、102万円(税別)です。
コンサルティングから始めて、ある程度の期間を要します。
契約内容の複雑さによって変動しますが、変動した例はほとんどありません。
他に
・公証人手数料上記の場合は43,000円
・登記費用: 不動産を信託財産とする場合、信託の登記費用が必要です。
- 登録免許税:不動産価額の0.4%
- 司法書士報酬:10万円~15万円程度(当事務所でが提携している信託登記に詳しい司法書士をご紹介します)
4-2. 運営費用
・受託者報酬
家族の場合は基本的に無報酬ですが、例えば兄弟姉妹のうち一人が受託者になると一人だけ負担が大きくなります。
そのため受託者の報酬を設定する場合があります。
その場合の報酬の払い方は、およそ下記のパターンに分かれます
- ・月額定額型
- ・収益額に応じた報酬(特に収益不動産管理):経費を控除したの2%~3%程度
・専門家への相談費用: 信託運営上の相談や確認のため、以下のような費用が発生する可能性があります・
- 弁護士相談料:1時間1~3万円程度
- 税理士相談料:1時間5千円~2万円程度
行政書士相談料:当事務所の場合、40分5千円。当事務所または提携法人が信託監督人になっている場合は無料
5. 家族信託の具体的な活用事例
実際の活用事例を見ていきましょう。
5-1. 認知症に備えたケース
70代の父親が、将来の認知症に備えて、自宅と賃貸マンションを長男に信託したケース
<信託の内容>
- ・第一受益者を父親本人(委託者)とする
- ・受託者である長男が契約成立後、物件を管理
- ・賃料収入は父親(受益者)の生活費・医療費に充当
- ・父親死亡後は、信託契約を終了させ相続人が相続をする。
信託契約に契約終了の条件を必ず明記しておく。
5-2. 相続を見据えたケース
80代の母親が、相続後のトラブル防止と財産保全のため、資産を信託したケース
<信託の内容>
- ・複数の不動産を長女に信託
- ・第一受益者を母親本人とする
- ・母親死亡後は、3人の子どもが平等に受益権を持つ(3分の1ずつ)
- ・不動産の売却権限を受託者である長女のみに信託契約にて付与
長女は売却権限を持っているが、権利は3人の子供が平等に持っている。
長女の判断で売却した場合は、売却益を3人で公平に分配する。
おわりに
家族信託は、相続対策として非常に有効なツールですが、適切な設計と運用が必要不可欠です。
ご自身の状況に合わせた最適な対策を検討する際は、ぜひ専門家にご相談ください。
当事務所では、家族信託に関する相談を承っております。お気軽にお問い合わせください。
経験豊富な専門家が、丁寧にサポートいたします。
(文責 島田)