家族信託の手続きが必要な理由と、手遅れになる前にやるべきこと
2024/06/03
家族信託は、遺産相続や介護費用の管理など、家族の将来をあらかじめ計画し、円滑な生活を送るための制度です。しかし、手続きを怠っていると、思わぬトラブルにつながることもあります。本記事では、家族信託の手続きが必要な理由や手遅れになる前にやるべきことなどについて解説します。
目次
家族信託とは何か
家族信託とは、家族や親族間で資産管理を行うための信託であり、行政書士が手続きを担当しています。信託契約を締結することで、移転された資産は信託財産となり、信託の名義人が管理・運用します。具体的には、不動産、株式、現金など、さまざまな資産を信託に移すことができます。
ご自身の財産をすべて信託財産にする必要はなく、また、年金受給権(一身専属権)など直接には信託財産にできない財産もあります。
家族信託は、相続対策や贈与対策、事業承継など、様々な目的で利用されます。また、信託契約書に記述された条件に基づいて資産の管理・運用が行われるため、資産管理に対する不安を解消することができます。ただ、認知症になると契約自体ができなくなるため、早い段階でご検討ください。
家族信託の手続きが必要な理由
家族信託は、一般的に遺言書と同様に遺産分割を行うことを目的することが多いですが、家族信託の場合は委託者と受託者で契約を行います。委託者が親、受託者が子であることが多いため家族信託と呼ばれます。
契約書の作成には家族信託契約独特の専門的な知識が必要です。 家族信託の手続きが必要となる理由のうち最も重要なものと思われるのは資産を安定的に管理することです。その次に資産の承継をを円滑に進めるためです。家族信託を設立することにより、資産承継における紛争を回避することができます。
資産承継においては、相続人同士で話し合いを続けることで決まりますが、特に資産の分割が複雑な場合、また子供たちなどである相続人の希望が統一されていない場合などは争い(争族)が起きることがあります。 それに対して、家族信託ではあらかじめ信託契約に基づいて、資産の分配方法を決めておくことができます。信託財産の持ち主である委託者の意思が明確に示されているためため、相続人が話し合う必要を少なくに進めることができます。
家族信託の手続きとはどのようなものか
家族信託とは、家族内で資産管理などを目的として設立される信託です。手続きとしては、まず行政書士などの専門家に相談し、信託契約書を作成します。信託契約書には、信託財産の範囲や信託目的、利益分配方法などが定められます。次に、信託資産を信託財産として移転させ、信託会社などの設立登記を行い、信託人を選定します。最後に、信託財産の運用管理を行い、信託目的に応じた活用がされます。家族信託は、相続税対策や財産分割、事業承継などにも役立ちます。しかし、信託設立には費用がかかり、運用も必要となりますので、慎重に検討する必要があります。
手遅れになる前にやるべき家族信託の手続き
家族信託は、遺言書や相続手続きなどの場合に重要な法律です。しかし、手続きを行いたい時期には既に手遅れになっている場合があります。典型的なのは認知症です。そこで、お元気なうちに家族信託の手続きを行うにあたっては早い段階で取り組むことが必要です。行政書士に相談し、適切な手続きを行うことで、財産の管理や分与、相続手続き時に混乱を避けることができます。また、将来にわたって家族を守るため、ぜひ家族信託の手続きを検討してください。
家族信託を利用することで得られるメリットとデメリット
家族信託とは、家族間で相続や資産管理を円滑に行うための制度です。相続人が多く複雑な手続きが必要な場合でも、信託契約があるため手続きが簡単になります。また、家族間のトラブル予防にもなります。当事務所では家族信託を検討する際に家族会議を開くことをお勧めしております。家族信託について説明は欲しいとのご要望をいただき会議にご同席することも頻繁にあります。一方、デメリットは信託にかかる費用や手続きに時間がかかることがあります。自分だけで作れる遺言と異なり家族信託では登場人物が複数になり、受託者など関係者の承諾が必要となることも多いからです。また、信託を利用した場合でも、相続人は法定相続分を主張することができます。家族信託を利用することで得られるメリットとデメリットを正しく理解し、適切な選択を行いましょう。